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■宇野亞喜良展 ■難波田史男、没後50年 ■大城夏紀

■オペラシティーアートギャラリー,2024.4.11-6.16 *以下の□3展を観る. □宇野亞喜良展 ■宇野亞喜良の描く少女のイラストは神秘性がある。 ここに理性的なエロティズムが加わる。 寺山修司の演劇ポスターや流行雑誌の挿絵もこの方向を崩さない。 近頃は作品に出会っていません。 この展示会で彼の全体像を知ることができました。 宇野を調べると、日本のイラストレーターやグラフィックデザイナーの殆どが関係しあっていたことが分かる。 1960年代の喧騒が伝わってきます。 しかし彼は影が薄い。 その理由がインタビュー映像を見て分かりました。 「一般人を意識していない」「前衛ではない」。 企業人として仕事をしていた為でしょう。 そして<日常の女性>を<非日常の女性>に進化させた。 企業広告時代のプロ意識をそのまま維持しながら作品を作り続けていった。 イラストレーター名誉職人ですね。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh273/ □特別展示没後50年難波田史男 ■難波田史男の履歴をみて驚く。 瀬戸内海でフェリーから転落死、とある。 享年32歳。 夕焼色の連作「題名不詳」(1963年)が気に入りました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=299 □大城夏紀 ■これは楽しい。 春に包まれた贈答品です。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=300

■北欧の神秘、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画

■SOMPO美術館,2024.3.23-6.9 ■北欧3国が入り混じって見分けがつかない。 遠国からみれば日本・韓国・北朝鮮がどれも同じに見えるのと似ている。 フィンランドは平地でノルウェーに向かうほど険しい山々になるはず・・、風景画では実際そうみえます。 ただし作品タイトルに「ノルウェー」とあるにも関わらず所蔵館はスウェーデンやフィンランドが多々ある。 やはり混乱しますね。 3国の関係がまったく掴めない。 長閑な自然風景を期待していたが最初だけでした。 19世紀末からはフランス美術界の影響が強くなるからです。 もちろん印象派の存在は大きい。 でもゴーギャンの名前がよく登場しますね。 北欧は総合主義から象徴主義に向かったようにみえる。 これに神話や民話が結びついていく。 展示は「都市」で締めくくっている。 雪が止んだ一時の都会風景が多い。 「そり遊び」は楽しいでしょうね。 しかし貧困も目立つ。 ムンク「ベランダにて」の二人は都市の身体を感じます。 19世紀後半以降の北欧は西欧(フランスなど)の影響を受けっぱなしにみえる。 3国の位置づけが朧気に見えた展示会でした。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/magic-north/

■中平卓馬、火・氾濫

■東京国立近代美術館,2024.2.6-4.7 ■中平卓馬の写真が載っている雑誌をそのまま展示している! つまり1960・70年を会場へ一緒に連れてきたのだ! 雑誌「現代の眼」と寺山修司を通して彼が写真の道に入ったことを知った。 「現代の眼」は読み易い雑誌だった。 タイトルは「朝日ジャーナル」のようで、内容は「文芸春秋」を左翼化したようなものだった。 彼の写真は当初から雑誌向けだろう。 切り取り方は斬新だが世間・報道の匂いが強い。 いま見てもそう思う。 会場前半は「アサヒグラフ」「朝日ジャーナル」「アサヒカメラ」などアサヒ系がズラッと並ぶ。 それと「映画批評」も。 文章は読む気がしない。 写真だけ摘まみ食いをしていく。 後半の「4章 島々・街路」あたりからやっと写真展らしくなっていく。 壁に並んだ作品群はやはり迫力がある。 会場の終わりに八戸市での映像(2005年)を見たが彼は1970年頃の姿のままだった。 この時代はもはや凍結してしまったのかもしれない。 *美術館、 https://www.momat.go.jp/exhibitions/556

■安井仲治、僕の大切な写真

■東京ステーションギャラリー,2024.2.23-4.14 ■未知の写真家です。 いちど観ておきたい。 ということで東京駅に行ってきました。 安井仲治は若い頃に写真を始めたが、1931年に国内で開催した「独逸国際移動写真展」を観て変わっていく。 新興写真の洗礼を受けたのです。 ピクトリアリスムから離れてフォトモンタージュ技巧を取捨しながらシュルレアリスムに近づいていき「半静物」を考案しデペイズマンに取り組んだ。 「物自体、事自体に潜む驚異と秘密を探る・・」。 彼の言葉です。 初期の「クレインノヒビキ」(1923年)はまるで絵画です。 魚介類の干物には豊かさがある。 中期以降はシュールな静物画より風景や肖像作品が気に入りました。 たとえば労働者のポートレイトや演劇役者、デモ隊、サーカス芸人等々・・。 また20世紀前半の日本写真界動向を安井の作品から推測できる展示になっている。 この激動の中を彼は疾走したのが見えてきます。 *美術館、 https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202402_yasui.html

■豊嶋康子、発生法ー天地左右の裏表 ■シナジー、創造と生成のあいだ ■歩く、赴く、移動する1923→2020

*以下の□3展を観る. ■東京都現代美術館,2023.12.2-2024.3.10 □豊嶋康子,発生法-天地左右の裏表 ■木片を組み合わせた画板のような作品が並んでいる。 授業の木工製作? そして、くす玉!? 混乱します。 超長算盤や反転マークシート、二色碁石をみて作者の意図が少し見えてきました。 曲がった定規や削った鉛筆をみると小学生時代の悪戯を思い出します。 なんと!作者の義務教育時代の通知書や表彰状、卒業証書、そして預金通帳、株式取引、株券などなど本物?がそのまま展示されている。 これは衝撃ですね。 誰もが同じ書類を同じ量だけ家に保管してあるからです。 他人の小中学時代の通知書や学級委員証書を見ながら、久しぶりに自分の過去を振り返ってしまった。 変わった体験でした。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/ □シナジー,創造と生成のあいだ-MOT・ANNUAL2023 ■作家:荒井美波,後藤映則,(euglena)他 ■<生成>とはコンピュータやプログラムそして人工知能を利用して半自動で作品を創造する意味らしい。 半自動の残りは作家の創造ですか。 先ずは後藤映則の光と素材で人や物の動きを立体映像にする作品が面白い。 暗くて仕掛けが分からないのが残念。 UnexistenceGallery(原田郁ほか)の壁絵はリアルでないリアルさがある。 このグループの作品をもっと観たくなった。 花形槙のカメラを足につけてヘッドディスプレイをして歩き回る実験は楽しい。 目の位置が変わるだけで身体感覚がこんなにも違ってしまう不思議さを再認識させてくれる。 最後に日テレイマジナリウム2023でメタバースを体験した。 ゴーグルを付けた世界は目新しいがリアルには程遠い。 メタバースの日常化はもう少し先でしょう。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-annual-2023/ □歩く・赴く・移動する1923→2020MOT・Collection ,横尾忠則-水のように,生誕100年サム・フランシス ■作家:鹿子木孟郎,尾藤豊,麻生知子ほか ■関東大震災後の隅田川両岸を歩く。 戦後風景が残る20世紀半ばの清澄白河を歩く。 途中サム・フ

■FACE展2024

■SOMPO美術館,2024.2.17-3.10 ■どれが受賞作なのか分からない、キャプションをみれば分かるのですが。 どれも同じように見えてしまいます。 作家たちの思い描くことが同じようになっているからでしょう。 接する情報量が増えている、それが同質のためかもしれない。 抽象画がグランプリのようです。 やはり会場を回っても抽象画が多い。 情報以外の人・物の体験比重が小さくなっているから? 今回は1200名の応募から80点を選んだそうです。 それでも、作品から作品へ目を移す時は別世界に飛べる。 そして作品の裏にある作家の環境を勝手に読み解く。 未知の作家ならではの楽しい見方です。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2022/face2024/ *追記・・新宿武蔵野館に寄り映画「J=L・ゴダール/遺言,奇妙な戦争」(J=L・ゴダール監督)を観る. 感想は 🐸のtwitter Xに投稿しました.

■ガラスの器と静物画 ■静物画の世界 ■宮林妃奈子

■東京オペラシティアートギャラリー,2024.1.17-3.24 □ガラスの器と静物画,山野アンダーソン陽子と18人の画家 ■「このような器を作って欲しい」。 画家から依頼されたガラス職人はその器を作り、それを画家が日常の中で描く・・。 そして本にする。 面白い流れです。 ガラスは色のある飲み物が似合う。 ワインやジュースは分かるが、牛乳が多いのは興味深い。 ガラスに乳色は特別にもみえる。 幼児・子供時代を思い出させるからでしょう。 実は厚みのあるガラス食器が好きなのですが一つも無かった。 自宅のコップやウイスキグラスなどは全てがゴツイ。 厚いガラスは唇が喜びます。 食の味も変化する。 薄いガラスは生活が繊細になる。 しかも会場には小ぶりが多い。 ガラス作家の意向が強く表れているようにみえます。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh270/ □静物画の世界,収蔵品展078寺田コレクションより ■静物画大好き人間にとっては最高です。 個性ある画家20人の饗宴ですね。 ここで五味文彦に会えるとは嬉しい。 窪田洋子を収蔵品展で見かけることは殆どない。 でも今日は10枚近く展示してある。 これも嬉しいですね。 常連の川口起美雄、他に川原朝生の作品が気に入る。 鉛筆画や版画もあったが、これらを含め満足度200%でした。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=296 □宮林妃奈子,projectN ■躍動感ある筆さばきに、ぼんやりと映える直線直面が全体を引き締めている。 見つめるほど味がでてきます。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=297

■池大雅、陽光の山水

■出光美術館,2024.2.10-3.24 ■「万巻の書を読み万里の路を行く」。 「瀟湘勝概図屏風」の岩の形、葉の移ろい、時雨の動き、どれも温かみある空気を通して伝わってきます。 抽象画へのベクトルも感じられて面白い。 富士山や浅間山の真景図をみていると旅好きがわかる。 独特な点描葉は日本の広葉樹林の優しさを鮮やかに表している。 「東山清音帖」は扇の形が大雅をより自由にさせている。 文字も絵の一部でしょう。 楽しんで描いている彼の姿が目に見えます。 憧れの中国への想像力が次第に膨らんでいったようですね。 「十二カ月離合山水図屏風」の背景の冬山はモコモコし過ぎて恐ろしいくらいです。 自由に動き回っていた頃は妄想が抑えられていたのかもしれない、四季のメリハリは効いているが。 生誕300年記念展の池大雅を久しぶりに楽しんできました。 *美術館、 https://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

■印象派、モネからアメリカへ ■和食、日本の自然・人々の知恵

□印象派,モネからアメリカへ ■東京都美術館,2024.1.27-4.7 ■ウスターと言えばソースや劇団名を思い浮かべるが美術館は初めてです。 隣のボストン美術館と違い知名度は低いですね。 でも何が出るか?ウキウキしながら上野へ・・。 ・・フランスや日本の画家も入り混じるのでアメリカが目立たない。 クロード・モネの「睡蓮」(1908年)が気に入りました。 水面が春空の色で輝いている。 深みある水面が多い「睡蓮」の中では晴れやかな感じがするからです。 アメリカでは本展の中心人物F・C・ハッサムが、また印象派からは少し離れたJ・S・サージェントが網膜に残りました。 アメリカ印象派はどちらかというと地味ですね。 ハドソン・リバー派の色調主義(トーナリズム)のある淡い色彩が覆っている。 最終章「まだ見ぬ景色を求めて」でポール・シニャック「ゴルフ・ジュアン」(1896年)、ジョルジュ・ブラック「オリーヴの木々」(1907年)の目が覚める色彩を前にして、アメリカ印象派の辿った生涯が朧気ながら見えた気がします。 南北戦争の傷跡が一生付きまとったのではないでしょうか? *ウスター美術館所蔵展 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_worcester.html □和食,日本の自然・人々の知恵 ■国立科学博物館,2023.10.28-24.2.25 ■次に科学博物館へ・・。 「和食」展は去年観る予定が今日になってしまった。 食のことが一杯で、これは楽しい! 穀物と野菜、魚介類と海藻類が中心です。 口に入れる時は加工されていて個体像がみえない。 本物そっくりのレプリカでも、自然に生息している姿をみて感動しました。  後半では卑弥呼や長屋王から始まり、織田信長が徳川家康をもてなした膳、江戸庶民の屋台、天皇晩餐会そして昭和時代の食卓をみて日本風土の広がりが分かります。 卑弥呼や長屋王の食卓は今でも涎がでてくる、ただし味付けは塩などで単純ですが、ダイナミックナな自然の力が迫ってきます。 最後には現代に通ずるカレーやラーメンも登場する。 特にキノコ類、海藻類や貝類の充実が和食の深さですね。 加えて発酵と旨味ですか。 和食最高ですが、環境問題もあり安泰としてはいられない。 *博物館、 https://washoku2023.exhibit.jp/

■フランク・ロイド・ライト、世界を結ぶ建築

■汐留美術館,2024.1.11-3.10 ■会場が混んでいて入場を待たされたのは当館で初めてです。 建築展では珍しい。 場内はいつものとおり文章を読ませる展示だが苦にならない。 量と質、配分が適格だからです。 しかしライトの世界に入れない。 それは浮世絵が所々に飾ってあったからです。 もちろんライトは日本美術から影響を受けたことはわかる。 でもライトの作品と似合わない。 彼のプレイリー・スタイルから感じ取れるのはケルト系の自然崇拝や多神教、メキシコやアジアの古代遺跡、そしてアメリカに広がるプレーリーでしょう。 前半を過ぎるとライトの全容がみえてくる。 それは教育者としての顔です。 教育環境を作る! 教育学者ジョン・デューイと関連のある「自由学園」(1926年)は見学したことがある。 またライト自身もフリードリヒ・フレーベルの教育玩具で遊んでいたらしい。 映像「タリアセン・フェローシップ」(1933年)も初めて見ます。 途中に「帝国ホテル」(1923年)が登場。 当時の空中カラー写真をみるとまるで古代遺跡ですね。 大谷石の選択、すだれレンガの採用など建築途中の変更が並みでない。 なぜ関東大震災時でも無傷だったのか? その複数の理由を知ることができた。 そして次期帝国ホテル設計者田根剛の完成写真(2036年)を見るとまるで<未来遺跡>です。 古代遺跡から未来遺跡へ! これは楽しい! *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/240111/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、フランク・ロイド・ライト ・・ 検索結果は2ブログ . *追記・・WEBで本展示会オンライン講習会を観る。 講師は当展企画監修のケン・タダシ・オオシマ。 上演時間は90分。 解説が展示順のため会場の構成風景と作品を思い出しながらみることができました。