■暁の劇場-鴎外が試みた、或る演劇-

森鴎外記念館,2014.4.26-6.22
■森鴎外は高校時代以来ご無沙汰の作家だ。 彼が演劇に深く関わっていたことを知らなかった。 展示は親切で分かり易い。 芝居ごとの解説、スタッフや俳優、劇場風景などの資料や写真、スライドが並んでいる。
主な作品は、「玉篋兩浦嶼」「日蓮聖人辻説法」「假面」「ジョン・ガブリエル・ボルクマン」「静」「生田川」「寂しき人々」「ファウスト」「マクベス」「女がた」「ノラ」「曽我兄弟」。 戯曲だけでも全70作品はある。
「ノラ」は島村抱月が訳して鴎外の名を借りたとか、「マクベス」は稿本が鴎外・注解を坪内逍遥・これを元に鴎外が刊本した「逍鴎論争」もある。 鴎外が演劇に関わった一番の原因は弟篤次郎の存在かもしれない。 彼も医者だが歌舞伎に熱を入れていた。
しかし鴎外は医者・軍人・小説家という何でも屋の為か、何を考えていたのかよくわからない。 この展示会をみても彼は演劇が好きには見えない。 作家インタビュー映像にこの答えがあった。 加賀乙彦は「鴎外は翻訳ではなくて研究をしたかった・・」。
明治時代は翻訳が優先したため鴎外はそれに巻き込まれてしまったのだ。 平野啓一郎も「個人ではどうしようもできない、諦念がみえる・・」。 軍人も翻訳も本意でなかったのか? ・・鴎外の悩みが少しわかった。 館を出ると東京スカイツリーが一望できた。