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■未来のかけら

■ディレクター:山中俊治,参加作家:荒牧悠,舘知宏,遠藤麻衣子ほか ■21_21 DESIGN SIGHT,2024.3.29-8.12 ■専門領域が異なる7組のデザイナ・クリエイタと科学・技術者のコラボによる「未来のかけら」を紹介している。 ざっとみて感じるのは身体に直接・間接に関係するもの、例えば乗り物、衣服、ロボットなどなどが多い。 素材は骨のような物質、金属・繊維・プラスチックなど多種に及んでいる。 小学生時代のクラブ活動を思い出してしまった。 展示物を見ているとウキウキしてくるからです。 デザイナーは子供時代の心をそのまま維持しているのかもしれない。 しかし作品は古いですね。 どれもどこかで10年前から見ているものばかりです。 近頃は機密等々が煩くなっている為ですか? 身体への対応はAIや量子力学と違い遅々として進まないはずです。 生物(学)が絡み、しかも感覚を含めた肉体が対象のためです。 今のままの身体を維持するのか? これを議論する時代もやってくるかもしれない。 *美術館website、 企画展未来のかけら

■晴海フラッグ

■設計:光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所ほか,施工者:東京都,建築者:三井不動産,三菱地所ほか ■開業:2024.1.19(マンション入居開始) ■久しぶりに晴海へ行く。 東京国際見本市会場があった場所だ。 仕事でここに足を運んだ時期があった。 会場が東京ビッグサイトに移転した後は一度も来ていなかった。 オリンピック選手村から分譲・賃貸ビル群になったが人通りは少ない。 工事現場も一部に残っている。 木々も新しくスカスカな感じがする。 入居はこれからなのか? 中央に商業施設棟と小中学校、奥には晴海ふ頭公園がある。 公園から港を望むが昔と略変わらない。 遠くに見えるビル群が海と空に挟まれている。 周囲を一回りする。 商業施設は1階にスーパーマーケット、2階はレストラン、3階には診療所や幼稚園が入っている。 並みの店屋が多い。 この場所は交通の便も悪い。 今日は都バスで入り帰りはBRTで新橋に出たがバスだけでは心細い。 入居が一段落したら酷く混むだろう。 そして2棟の高層ビルが工事中だったが高層は似合わない。 ここ「東京の最前列」は中低層で統一し豊かな緑の木々で満たして欲しい。 *晴海フラッグ、 晴海フラッグ特設サイト

■デ・キリコ展

■東京都美術館,2024.4.27-8.29 ■「日本では10年ぶり・・」とチラシにある。 それは「 デ・キリコー変遷と回帰ー 」(汐留美術館、2014年)の展ですか? ともかく、今回も沢山のキリコに会えて嬉しい。 彼には二度のインスピレーションがあったらしい。 その都度画題や画風が変化している。 しかしそれは直線的には進まない。 「過去作の再制作や引用」が多い為でしょう。 例えば1970年の「ヘクトルとアンドロマケ」は完成度が高い。 このため先に観た(描いた)1924年の同名は未完にみえてしまう。 作家の思想的完成度はどちらか分かりません。 技術的な到達点である1970年前後の再制作品を観る者は優先してしまうからです。 次へ進んだ<新形而上絵画>も頂けない。 黒い太陽やグニャグニャした紐のような描き方は形而上からズレている。 結局は<再制作と引用>によって彼の後半は前半を再確認しているだけに見られてしまう。 ところで分散展示されていた「神秘的な水浴」、「彫刻」、「舞台美術」の3トピックはどれも面白かった。 「神秘的な水浴」はJ・コクトー「神話」の版画連作だが、どこか謎めいていて楽しい。 「彫刻」は「・・柔らかく、暖かくなければいけない」と彼は言っている。 なかなかの科白です。 ブロンズ像だが観応えもある。 「舞台美術」は舞台情報が少なくて何とも言えない。 大回顧展のため量は十分だが脳味噌がビビッとする作品があと数点加わればより満足したでしょう。 *美術館website、 デ・キリコ展

■時間旅行 ■記憶、リメンブランス ■木村伊兵衛、写真に生きる

■東京都写真美術館,2024.4.4-7.7 *以下の□3展を観る. □時間旅行,千二百箇月の過去とかんずる方角から ■作家:宮沢賢治,小川月舟,大久保好六,宮本隆司ほか ■写真は時間旅行の入口です。 それは観る者と作品の間に生まれる。 大久保好六「新宿」(1931年)はラッシュアワーの新宿駅プラットホームを写している。 通勤客の衣装もホームの形も現在の姿とそう違わない。 90年という時間が不思議に滞留しています。 田沼式能「渋谷駅前広場」(1948年)は少し違う。 忠犬ハチ公もいますね。 広場を取り囲む店舗群、その左上に井の頭線渋谷駅の入口が見える・・。 当時と今の風景を重ねると70年が長いのか短いのか眩暈がしてきます。 恵比寿ビール工場の歴史写真を見ながら当時の写真美術館(1990年頃)を思い出してしまった。 周囲が工事中で美術館は仮店舗(プレハブ?)だったはず。 観る者は写真の前ではいつも時間の旅へ飛び立つことができます。 宮沢賢治「春と修羅」との関係は無視しました。 *美術館website、 時間旅行 □記憶,リメンブランス ■作家:篠山紀信,米田知子,グエン・チン・ティ他 ■最初の篠山紀信「家」(1972年ー)は作品の隅々まで嘗め回してしまった。 カレンダーや会社名、家具や置物などなど。 沁みついた生活の重みが迫ってくる。 マルヤ・ピリア「カメラ・オブスクラ」(2011年)は家の内と外を同時に収めている。 両者の色彩の落差と老人の姿は何故かデヴィット・リンチの映画作品を連想させます。 グエン・チン・ティ「パンドゥランガからの手紙」(2015年)。 ベトナムの記憶が伝わってくる。 チャム人は初めて聞きます。 淡々とした映像の流れがメコン川と同期しています。 *美術館website、 記憶 □木村伊兵衛,写真に生きる ■作家:木村伊兵衛 ■上記2展と違い会場が混んでいますね。 さすが木村伊兵衛。 ところで「時間旅行」と「記憶」を比較すると後者が重かったですね。 前者は回想で留まるが、後者は意識に刻みを入れるからです。 木村伊兵衛をまとめて観るのは久しぶりです。 気に入ったのは1章「夢の島ー沖縄」(1936年)。 沖縄の豊かさが画面から溢れている。 日常が充実している。 街での散策と買物、人々の挨拶や会話が聞こえくる。 沖縄は戦前に戻りたいと言っているようで

■遠距離現在 Universal/Remote

■作家:井田大介,シュ・ビン,トレヴァー・パグレン,ヒト・シュタイエル他,地主麻衣子,ティナ・エングホフ,チャ・ジェミン,エヴァン・ロス,木浦奈津子 ■国立新美術館,2024.3.6-6.3 ■「個人と社会の距離感について考える」。 わかり難いテーマです。 距離=情報の量と質や影響を論じているのは想像できる。 9人(組)の作家が登場します。 衝撃的な作品が多い。 シュ・ビン「とんぼの眼」(2017年)はその一つです。 監視カメラ映像11、000時間を編集し物語を被せている。 ドキュメンタリーとも違う。 男性主人公が行方不明の恋人を探す内容だが、中国日常の裏側が不気味に現前してくる。 監視社会を超えてしまう作者のパワーを感じます。 トレヴァー・パグレンは「米国安全保障局(NSA)が盗聴している光ファイバーケーブルのカルフォルニア上陸地点」(2016年)を写真で展示。 国家間に敷設しているインターネット・ケーブルを国家が盗聴していることは常識(と聞いている)。 人類はたった90億人しかいない。 国家は一人一人の情報を容易に膨大に収集している(はず)。 もう一つの作品も衝撃的です。 雑音(嘘)を混ぜたAIの出力を正規AIに取り込み処理し出力した画像(2018年)を展示している。 「男」「ポルノ」「軍人のいない戦争」「蛸」・・、どのタイトルも歪んだ恐ろしい画像になる。 ちょっとした誤りを入力したAIの怖さがでています。 ヒト・シュタイエル他の映像「ミッション完了」(2019年)も面白い。 ファッション・ブランドの有名人を話題にするが、その背後にある政治的・経済的な仕組みを暴いていく討論会です。 資本主義の行き詰まりを描いているのか? デンマークのティエナ・エングホフ「心当たりあるご親族へ・・」(2004年)は孤独死した人の室や家具、持ち物を写真に撮っている。 死亡場所や日時、年齢が記載されているキャプションにも必ず目がいってしまいます。 他にも考えさせられる作品が多い。 時代が大きく転換する時代を生きている。 そう確信させる展示会でした。 *美術館、 遠距離現在

■マティス、自由なフォルム

■作家:H・マティス,A・マルケ,A・ドラン他 ■国立新美術館,2024.2.14-5.27 ■想定外の内容でした。 切り絵の展示会と思っていたからです。 マティスの全体像を描き出していますね。 昨年の「 マティス展 」(都美術館)と比較してしまった。 今回はその簡略版でしょう。 でもマティスファンだから気にしません。 「ニース市マティス美術館」所蔵が9割を占めている。 残りは「オルセー美術館」と「モンテカルロ・バレエ団」です。 前半はマティス30代頃のA・ドランやA・マルケとの出会いを強調している。 途中、バレエ「ナイチンゲールの歌」の衣装や映像で変化を付けています。 彫刻もある。 後半は50代からの線や色彩を純化させた印刷や切り絵が並ぶ。 そして「ロザリオ礼拝堂」で締める。 ニースの気候風土が作品に影響していることがわかります。 でもニースへ行ったことがない。 ニースを感じる展示会と言い直しても良い。 しかも国立新美術館は明るい。 ニースやカルフォルニアがここは似合います。 *美術館、 マティス自由なフォルム

■MUCA展、バンクシーからカウズまで

■作家:バンクシー,オス・ジェメオス,ジェイアール,バリー・マッギー,スウーン,ヴィルズ,インベーダー,リチャード・ハンブルドン,カウズ,シェパード・フェアリー ■森アーツセンターギャラリー,2024.3.15-6.2 ■ミュンヘンの美術館MUCAを初めて知る。 「U」はアーバンのこと。 ストリート・アートに永続性を付加するとアーバン・アートになるらしい。 その境界は微妙に動きそう。 バンクシーやカウズそしてJRは時々見かけるが、知らないアーティストも多く展示されています。 現代アーバン・アートが一望できる。 建物や道路、橋などの公共場所に描いていくがその手段が多彩で激しい。 コンクリートに描くヴィルズは爆薬を使う時もある。 リチャード・ハンブルドンのシャドウ・シリーズは強烈ですね。 ストリートのゴッド・ファーザーと呼ばれるだけある。 ところで「その椅子使ってますか?」は「ナイトホークス」のパロディですがバンクシーにしてはスピリットが直截過ぎる。 気に入ったのはシェパード・フェアリーです。 枯れた赤色を基調に20世紀激動期の政治を現代に甦らせているような作品が刺激的です。 世界のアーバン≒ストリートの動向が追える展示会でした。 MUCAの存在は心強い。 *テレビ朝日開局65周年記念展 *美術館、 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/muca/index.html

■シアスター・ゲイツ展、アフロ民藝

■作家:シアスター・ゲイツ ■森美術館,2024.4.24-9.1 ■作品が地味で広い会場が寂しい。 観客もまばらです。 でも気持ちがいい。 心身にゆとりが生まれます。 副題に民藝とある。 柳宗悦らの活動や作品を想像させます。 それらしき関係はあるようだがシアスター・ゲイツとは何者なのか? 会場途中まで見てもよく分からない。 彼の収集ライブラリや関係施設の写真をみて米国公民権運動、それに続くBLM(ブラック・ライブズ・マター)で活躍しているのを知る。 ジャンルを横断していますね。 常滑焼に興味を持っているようだが彼の陶器はアフリカを思い出させる。 屋根職人の父の影響もあり屋根材料の作品も展示されている。 しかし瓦や壁は興味が無い? アフロ藝術とは何か? 「ブラック・イズ・ビューティフルと日本の民藝運動を融合した」と言っている。 これもよく分からない。 ということで、雑誌「GQ」を売店で購入する。 ゲイツの記事が載っていたからです。 彼は何者なのか? 結局は今も分からない。 ブログはここまでにして雑誌を読むことにします。 そうそう、日本酒も展示されていました。 「門」つまりゲイツという名前です。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/index.html *追記・・雑誌「GQ」を読む。 「・・陶芸の不完全な美に惹かれた」「豊臣秀吉の朝鮮出兵時に陶工を日本に連れて帰ったが、アフロ・アメリカンの歴史に重ねてしまった・・」。 印象に残るゲイツの言葉です。

■宇野亞喜良展 ■難波田史男、没後50年 ■大城夏紀

■作家:宇野亞喜良,難波田史男,大城夏紀 ■オペラシティーアートギャラリー,2024.4.11-6.16 *以下の□3展を観る. □宇野亞喜良展 ■宇野亞喜良の描く少女のイラストは神秘性がある。 ここに理性的なエロティズムが加わる。 寺山修司の演劇ポスターや流行雑誌の挿絵もこの方向を崩さない。 近頃は作品に出会っていません。 この展示会で彼の全体像を知ることができました。 宇野を調べると、日本のイラストレーターやグラフィックデザイナーの殆どが関係しあっていたことが分かる。 1960年代の喧騒が伝わってきます。 しかし彼は影が薄い。 その理由がインタビュー映像を見て分かりました。 「一般人を意識していない」「前衛ではない」。 企業人として仕事をしていた為でしょう。 そして<日常の女性>を<非日常の女性>に進化させた。 企業広告時代のプロ意識をそのまま維持しながら作品を作り続けていった。 イラストレーター名誉職人ですね。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh273/ □特別展示没後50年難波田史男 ■難波田史男の履歴をみて驚く。 瀬戸内海でフェリーから転落死、とある。 享年32歳。 夕焼色の連作「題名不詳」(1963年)が気に入りました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=299 □大城夏紀 ■これは楽しい。 春に包まれた贈答品です。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=300

■北欧の神秘、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画

■作家:ガーラル・ムンチ,テオドール・キッテルセン,アウグスト・ストリンドバリ,アクセリ・ガッレン=カッレラ,フーゴ・シンベリ他 ■SOMPO美術館,2024.3.23-6.9 ■北欧3国が入り混じって見分けがつかない。 遠国からみれば日本・韓国・北朝鮮がどれも同じに見えるのと似ている。 フィンランドは平地でノルウェーに向かうほど険しい山々になるはず・・、風景画では実際そうみえます。 ただし作品タイトルに「ノルウェー」とあるにも関わらず所蔵館はスウェーデンやフィンランドが多々ある。 やはり混乱しますね。 3国の関係がまったく掴めない。 長閑な自然風景を期待していたが最初だけでした。 19世紀末からはフランス美術界の影響が強くなるからです。 もちろん印象派の存在は大きい。 でもゴーギャンの名前がよく登場しますね。 北欧は総合主義から象徴主義に向かったようにみえる。 これに神話や民話が結びついていく。 展示は「都市」で締めくくっている。 雪が止んだ一時の都会風景が多い。 「そり遊び」は楽しいでしょうね。 しかし貧困も目立つ。 ムンク「ベランダにて」の二人は都市の身体を感じます。 19世紀後半以降の北欧は西欧(フランスなど)の影響を受けっぱなしにみえる。 3国の位置づけが朧気に見えた展示会でした。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/magic-north/